静岡「サクラエビ」不漁を招いた一流企業のアッと驚く環境破壊
「サクラエビは高くても1ケース(15キロ)で7万円ほどの競り値でしたが、今年の春には2倍の15万円にまで跳ね上がってしまった。台湾産も使って当座をしのいでいる状態です」
「サクラエビの漁獲高は年々減少傾向にはありました。2000年代は1500~2千トンは獲れていたものの、ここ最近は千トン程度。そして、昨年はついに380トンまで落ち込んでしまいました」
結果、今春は85トンと過去最低の漁獲高となった。
では、サクラエビが伊勢えびより高級品となった不漁の背景には何があるのか。
「水の濁り方は尋常ではなかった。川底まで太陽光が届かず光合成ができないため、川底の石には苔が生えません。苔を食べるアユをはじめ、ほとんどの魚が生息できない状態なのです」
生コンも投棄
問題を追及する中沢通訓(みちのり)静岡県議が話を継ぐ。
「富士川の濁りはサクラエビの産卵場である駿河湾にまで広がっています。エサとなる植物性プランクトンの光合成にも影響が出て、生育に支障が出ている可能性は否定できません」
そして、富士川の濁りの「発生源」としてある企業の名前を挙げるのだ。
「富士川の上流では、日本軽金属が雨畑ダムという発電用の民間ダムを運営しています。ただ、そのダムはほとんど砂で埋まり、濁水が川に流れ込んでいる。さらに、日本軽金属の関連企業が雨畑ダム周辺で砂利を採取した際、余分な汚泥を上流域に不法投棄していたことも判明しました」(同)
不法投棄についてはすでに山梨県警が捜査に着手。加えて、関連企業が数千トンの生コンを川岸に廃棄していた疑いも浮上した。令和の時代に、高度経済成長期の公害問題のような「垂れ流し」が横行していたことには呆れるのを通り越してエビ反りする他ない。しかも、日本軽金属は1部上場の日本軽金属ホールディングスの主力企業である。
「問題はまだあります。日本軽金属は発電施設に使った汚水を駿河湾に直接流していたのです。こうした許し難い行為がサクラエビ資源の減少を加速させているのではないか」(同)
ついに7月末には静岡・山梨両県知事が、雨畑ダムの堆砂問題の解決に当たることを表明するに至った。
一流企業らしからぬ所業について日本軽金属は、
「汚泥の不適切な対応に関し、多くの皆様にご心配をお掛けしたことに深くお詫び申し上げます。雨畑ダムの土砂についても除去を進めております」
「駿河湾の宝石」が輝きを取り戻す日はまだ遠い。
「週刊新潮」2019年8月8日号 掲載
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