川崎ブログ

魚のうんちく

魚を食べると健康に良いと言われる、その訳は?

 

テレビや雑誌などで“魚を食べて健康に”、“魚は体に良い”などと言われていますが、魚の何が私たちの体に良いのかご存じですか?

また、ここ数年サバ缶やイワシ缶が人気ですが、手軽に魚を摂取できる缶詰で、美味しくヘルシーな食事をとろうとサバ缶やイワシ缶を手に取ると、――あれ、脂質の量、思っていたより、多いような……。

こんな風に、缶詰の栄養成分表示を見て脂質の多さに驚かれた方もいるのでは。
ヘルシーなイメージのある魚の缶詰。でも表示だけ見ると、輸入牛肉などのサーロイン脂身付きと同じくらいの脂質の量があります。

一体魚の油はどんな油なのか、また魚の栄養について探ってみましょう。

魚の脂ってどんな脂?

さて、まずは栄養素のおさらいです。
脂質は炭水化物、タンパク質とならぶ三大栄養素のひとつです。エネルギー源として使われるほか、細胞の膜や脳などの神経組織の重要な成分や、わずかな量で体の動きを調節する物質の原料にもなる、とても重要な役割を持っています。

この脂質の主要成分は脂肪酸。脂肪酸はバターやラード、ココナッツオイルなどの飽和脂肪酸とオリーブオイルや菜種油、魚油の不飽和脂肪酸に分けられます。

飽和脂肪酸は融点が高く、常温では固体で存在します。また、分子の構造により酸化しにくく、熱に比較的安定していると言われています。一方、不飽和脂肪酸は常温では液体で、また酸化しやすい物質です。

さらに不飽和脂肪酸には多価不飽和脂肪酸と一価不飽和脂肪酸があり、DHAやEPAと呼ばれる魚から多く取られる油は、多価不飽和脂肪酸で、その化学式の特徴からオメガ3系脂肪酸と呼ばれるグループに入ります。

多価不飽和脂肪酸はなぜ必須?

脂肪酸の中には私たちが生体内で作ることができない、しかし、体にとって重要な役割を持つものがあります。この脂肪酸を必須脂肪酸と呼び、食事から摂取しなければならない脂肪酸とされています。

必須脂肪酸にはリノール酸、α-リノレン酸、アラキドン酸があります。DHAやEPAはα-リノレン酸から合成できますが、実際には体内でほとんど作られないため、広義ではDHAやEPAも必須脂肪酸と考えられています。

魚の油にはDHAやEPAが多く含まれているため、健康に生きるために必要と言われています

DHAやEPAは何?

DHAはドコサヘキサエン酸(docosahexaenoic acid)、EPAはエイコサペンタエン酸(eicosapentaenoic acid)、の略で、前述の通り、食事からの摂取が必要な多価不飽和脂肪酸です。

DHAは血中の中性脂肪を下げる効果の他、脳のシナプス部位の膜流動性を高め、神経伝達物質の受容体を活性化することで、記憶をサポートすると考えられています。
一方のEPAはエイコサノイドという少量で免疫や炎症反応に関係する体の働きを調節する物質を合成するために役立つと言われています。

DHAとEPAは、魚の種類によって比率は違っても、魚油の中に一緒に混在しています。

魚のタンパク質について

魚は良質のタンパク質と言われますが、いったい何が良質なのでしょうか?
ここで言う良質の意味の一つとして、生物価の高さを示しています。
生物価とは、食事で摂ったタンパク質のうち、体に残ったものの割合のことを言います。

生物価が最も高いのは卵(87~97)で、一般に生物価70以上のたんぱく質が良質とされています。乳、肉、魚などの動物性食品が当てはまります。
例えばアジは様々な調理(生、酢〆、煮る、焼く)をしても、全て70以上の生物価を示すことが知られています。

また、魚にはタンパク質やDHA・EPAの他、ビタミンやミネラルも豊富に含まれています。

DHA・EPAを美味しく摂取するには

海の生物のほとんどはオメガ3系脂肪酸であるEPAやDHAを持っていると言われています。
その中でもマグロやサケなどの広い海域を回遊する魚や、サバやサンマ、イワシなどの青魚はオメガ3系脂肪酸を多く含んでいます。

厚生労働省では、日本人が1日に摂取するオメガ3系脂肪酸の食事摂取基準(目安量)として、下記のように定めています。
18歳以上では、焼いたサンマ約半尾、小ぶりのイワシ約2尾。お刺身だとマグロのトロ2~3切れ、ブリで4~5切程度です。——どうですか、意外とすぐに食べられそうですよね。

n-3系脂肪酸の食事摂取基準(g/日)
年齢等 男性目安量 女性目安量
0~5(月) 0.9 0.9
6~11(月) 0.8 0.8
1~2(歳) 0.7 0.8
3~5(歳) 1.1 1.0
6~7(歳) 1.5 1.3
8~9(歳) 1.5 1.3
10~11(歳) 1.6 1.6
12~14(歳) 1.9 1.6
15~17(歳) 2.1 1.6
18~29(歳) 2 1.6
30~49(歳) 2 1.6
50~64(歳) 2.2 1.9
65~74(歳) 2.2 2
75以上(歳) 2.1 1.8
妊婦 1.6
授乳婦 1.8

(厚生労働省 日本人の食事摂取基準(2020年版)より抜粋)

魚に含まれるEPA・DHA 成分表(可食部100g当たり)
魚介類 オメガ3系脂肪酸(g) EPA(mg) DHA(mg)
(あじ類)/
まあじ/皮つき/生
1.05 300 570
(いわし類)/
まいわし/生
2.1 780 870
(かつお類)/
かつお/春獲り、生
0.17 39 120
(かつお類)/
かつお/秋獲り、生
1.57 400 970
(さけ・ます類)/
しろさけ/生
0.92 240 460
(さば類)/
まさば/生
2.12 690 970
さんま/
皮つき/生
5.59 1500 2200
ぶり/
成魚/生
3.35 940 1700
(まぐろ類)/
くろまぐろ/赤身、生
0.17 27 120
(まぐろ類)/
くろまぐろ/脂身、生
5.81 1400 3200

(出典:日本食品標準成分表2015年版(七訂) )

毎日は無理でも、定期的に適量を、脂ののった魚を食べるのはオススメです。
魚の缶詰はオメガ3系脂肪酸の調理による損失が少なく、缶の中に存在しています。手軽にそのまま食べてもよいですし、缶汁ごと使ったレシピで色々アレンジして、楽しく料理してみてはいかがでしょうか?

魚はいつ食べるとよいの?

タンパク質は一食でまとめて摂取するよりも、朝食・昼食・夕食や間食で均等に摂る方が、筋タンパク質の合成をより高めることができることが報告されています。

また、DHA・EPAについての研究では、朝食にDHA・EPAを摂取すると、夕食に摂取するより中性脂肪を低下することが分かってきました。

毎年6月22日はDHAの日。DHA(Docosahexaenoic Acid=ドコサヘキサエン酸)が、6つのシス型の二重結合を含む22個の炭素鎖をもつカルボン酸の総称であることから、6月22日は「DHAの日」と制定されました。

魚は食べられるときにいつ食べてよいものですが、この機会に明日の朝食に魚を取り入れてみませんか?

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