エサが『ちょっと変』な養殖ブリ 「チョコ」の次は「アセロラ」?
チョコで育ったブリ?
もうすぐバレンタインデー!1年で最もチョコが食べられる時期ですが、実はかつて「チョコを食べて育った」養殖魚のブランドがあったことをご存知でしょうか。
「アセロラ」でブリが旨くなる
先日、北関東を中心に展開するとあるスーパーマーケットで、少し変わったブリの切り身が限定販売され、話題になりました。そのブリとはなんと、アセロラの成分を加えた餌で育成した「アセロラぶり」です。
アセロラぶりは、魚の養殖技術開発で世界的に知られる近畿大学と、大手食品メーカーによる共同開発ブランドです。ドリンクや健康食品として人気の高いアセロラエキスの製造時に出る、搾りかすの粉末を餌に配合しています。
アセロラぶりは従来の養殖ブリより鉄臭さや渋味、特有の養殖臭などがなく、爽やかな味わいが特徴とされています。特に魅力的なのが「日持ちの良さ」で、冷蔵保存であれば、通常の養殖ブリと比べると平均で約2日間長く、鮮やかな赤身の色を保てるといいます。
ポリフェノールの効果
しかし、なぜ典型的なフィッシュイーターであるブリに、果物であるアセロラを食べさせているのでしょうか。
実はこのアセロラぶりのように「果実を与えて養殖した魚」は全国各地に存在しています。最も多く用いられているのはゆずやかぼすといった柑橘類で、その他にもぶどうや茶を与えて育てたものもあります。
これらの素材に共通して含まれているのが「ポリフェノール」。ご存知の通り、人間に対して高い抗酸化作用があることが知られ、健康食品等に用いられています。このポリフェノールには、魚の筋肉の変色を抑える作用もあるのです。
それに加え、柑橘の皮に含まれるリモネン、茶葉に含まれるカテキン、アセロラにふんだんに含まれるビタミンCといった栄養素も、魚臭さや脂臭さを軽減させる作用があります。このような理由から、各種の植物素材を養殖飼料に混ぜて良い効果を得ようとする研究が各地で行われており、様々なブランドが開発されているのです。
養殖ブリに「チョコ」!?
さて、バレンタインデーも近い今の時期に最も注目される食べ物といえばやはりチョコレート。この原料となるカカオ豆も高ポリフェノール食材であることが知られています。
そのため、チョコレートを食べさせて育てた養殖魚も、かつて存在しました。愛媛県が開発した「チョコブリ」がそれです。出荷前の20日間、餌としてチョコレートを与えることでポリフェノールが身に含まれるようになり、通常の養殖ブリと比べて、最高で5日間ほども長くその色味を保持することができたそうです。
この「チョコブリ」は2018年の秋に開発され、その後限定販売されました。残念ながら現在は品切れしているようですが、今後販売が再開されたら、バレンタインデーにピッタリの風変わりなプレゼントとなるかもしれません。
<脇本 哲朗/サカナ研究所>
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