くら寿司、AIで「特上マグロ」見抜く コロナ禍での仕入れを効率化
回転すしチェーンを運営するくら寿司は7月7日、AIの画像解析技術で冷凍天然マグロの品質を判定するシステム「TUNA SCOPE」を、キハダマグロの買い付けに導入すると発表した。尾の断面を専用のスマートフォンアプリで撮影すると、その品質を3段階で評価する仕組み。最高ランクの個体だけを仕入れて調理し「極み熟成AIまぐろ」(2貫で税込220円)として7月10日から期間限定で販売する。
新型コロナウイルス感染拡大に伴って、マグロの「目利き」(目視での品質判定)を担う職人が、国内外の原産地や加工場に足を運べないことを踏まえた取り組み。職人が立ち会わなくても、水産会社のスタッフなどがマグロにスマホをかざすだけで品質が分かる他、結果のデータを関係者間で素早く共有できるため、コロナ禍でも高品質なネタを提供できるとしている。
くら寿司の田中信副社長は「コロナ禍によって職人の移動が制限され、品質判定が難しい状況になっている。事態が長期化した場合は、人気のすしネタを安心して提供できないと考え、TUNA SCOPEの導入を決めた」と説明する。
新商品については「熟練の匠の技とノウハウをAIが受け継いだことで、他の回転ずしでは絶対に味わえないすしが誕生した」(田中副社長)という。
職人の評価と90%一致
TUNA SCOPEは、電通、電通国際情報サービス、双日が2019年に開発。マグロの断面画像と熟練の職人による評価を、ディープラーニングの技術で大量に学習させたAIを使っている。スマホをマグロにかざすと、身の締まり具合や脂の乗り方を分析し、A(特上)、B(上)、M(普通)の3段階で評価する。評価は数秒で完了し、結果の約90%が目利き職人の評価と一致するという。
TUNA SCOPEは、19年度に水産庁の支援事業に採択され、一部事業者が試験導入。AIが目利きしたマグロがニューヨークやシンガポールで売られるなど評価を高めているが、大手回転すしチェーンが導入するのは初めて。
くら寿司 購買部マネージャーの大濱喬王さんは「従来は、職人が一人前になるには10年以上の経験が必要だった。TUNA SCOPEを使うと、特定の職人を介さなくてもAIが正確な判断を下せるため、ベテランへの過度な集中を防ぎ、作業をスピードを上げる効果も見込んでいる」と話す。
「これまでは、より良いマグロを獲って高く売りたい漁師と、安定した価格でおいしいマグロを買いたい仕入れ側の間で、求める品質にギャップが生じるケースがあった。今後はAIによる定量的な評価を示すことで、これを改善したい」(大濱さん)
セルフレジ導入も進める
くら寿司は当面の間、双日の取引先である水産会社に絞ってTUNA SCOPEを提供し、判定する魚種をキハダマグロに限定するが、成果を踏まえて企業と魚種の拡大を検討する。今秋からセルフレジの配備を進め、客と店員の接触が少ない店舗運営も目指す。
田中副社長は「コロナ禍において、おいしい寿司を継続して提供するには、漁業者や仕入れ先など、皆さまに納得していただけるビジネスモデルが大事。今後も先進的な取り組みを進めていく」とした。
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