ホタテには目が200個あった! 瞳の裏に隠されたミステリーが明らかに
人間の100倍だと…?
「ホタテ」といえば、その淡白な味に魅了される者も多い。しかし、そんなホタテが貝殻のフチに最大200もの「目」を持っていることを知っている人は少ないだろう。
その複雑な構造についてはこれまで謎に包まれてきたが、「Current Biology」に掲載された新たな研究により、その目には光に反応して拡大・収縮する瞳孔があり、これまで考えられていたよりも動的な存在であることが明らかとなった。
高性能な天体望遠鏡
ホタテの目の仕組みは、人間のものとは大きく異なる。ホタテの目に入ってきた光は瞳孔と2つの網膜を通過し、目の裏側にあるグアニンの結晶でできた鏡に届くと、そのカーブした鏡によって網膜の内表面へと反射する。
そこでは神経のシグナルが生成されており、シグナルは内臓の神経節(神経細胞の塊)へと送られる。その神経節の主な仕事は、ホタテの内臓と貝柱の動きをコントロールすることであり、こうしたホタテの目の構造は高性能な天体望遠鏡と似ている。
長きにわたって、ホタテの目の仕組みは研究者らを悩ませ続けてきた。研究をおこなったサウスカロライナ大学のダン・スペイサー氏は、「メインの網膜は鏡に近すぎるため、散漫な光しか捉えることができないはずです」と語っている。
つまりホタテの網膜での映像は、ぼやけてピントが合っていないということだ。
しかし新たな研究が、この謎にヒントを与えてくれるものとなった。研究者らは、人間ほど素速くないにせよ、ホタテの瞳孔に拡大・収縮する機能があることを発見したのだ。
その直径は最大で50%も変化するが、拡大・収縮には数分間の時間がかかることもある。ホタテの目には人間の目にみられる虹彩が存在しておらず、その代わりに角膜内の細胞が形を変えている。これにより角膜の曲率を変化させ、鏡に近い網膜上に、鮮明な映像を映し出していることが考えられるのだ。
50~60の進化を経てきた
ホタテの目に潜むミステリーはこれだけではない。そこには人間の3倍もの量のオプシンが含まれていることが分かったのだ。オプシンは網膜の光受容細胞の中にみられるタンパク質であり、光を電気化学信号へと変換する調整をおこなってくれるものだ。
ホタテにみられる12のオプシンが、すべての目の中で働いているのか、あるいは視覚のスペクトラムによって専門分野があるのかどうかまでは分かっていない。また、2つの網膜のどちらかだけに働くオプシンがあることも考えられる。
「目」はおそらく、すべての動物を通して50~60の進化を続けてきた。そしてその多くのケースにおいて、視覚の基盤となる分子である光の信号を電気信号へと変換するタンパク質は大きな変化をみせてきた。
しかし、目の構造や光受容体は生物によって異なれど、根幹となる目の発達をコントロールする遺伝子は驚くほどに似通っていることが分かっている。たとえば、ほ乳類の目の発達において重要な役割を果たす「Pax6」と呼ばれる遺伝子は、ホタテの目の中でも同様の働きをしている。
ホタテの中にこんなミステリーがあることを知らなかった人も多いだろうが、次にホタテを食べるときには目が合わないように注意しておこう。ホタテを覗くとき、ホタテもまたみんなを覗いているのだ。
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