海水温が原因?シシャモ激減、価格高騰…産直通販も一時は「やめるか検討した」
北海道の太平洋沿岸の特定エリアに生息するシシャモの漁獲量が激減し、価格も高騰している。不漁の原因についてはっきりしたことは分かっていない。資源保全のため、終漁の時期を前倒しするといった対応に追われた漁協もある。
「町を代表するブランドだけに危機感は強い。ただ、資源確保のために漁期を切り上げる以外どうすることもできない」――。地域ブランド「鵡川ししゃも」で知られる鵡川漁協(むかわ町)圷(あくつ)勝・指導事業部長からため息が漏れた。
11月1日に今年のシシャモ漁が終わり、漁獲量は過去最少の約1・4トンに終わった。2017年に約72・6トンと一時的に資源が回復した時期もあったが、徐々に減り、ついに著しい不漁だった20年(約3・1トン)の半分以下となった。
周辺海域では不漁が続く。えりも以西の胆振・日高地方でシシャモ漁を行う鵡川、ひだか、苫小牧の3漁協でつくる「えりも以西海域ししゃも漁業振興協議会」は、産卵に来た親魚を保全するため、各漁協が解禁日から40日間とする漁期の終了日を6日早めるように申し合わせた。鵡川漁協は今月6日の最終日をさらに前倒しして今月1日に漁を終えた。
道東の十勝、釧路地方でも不漁が続く。11月19日に今年の漁を終えた大樹漁協(大樹町)では約12・2トンと、漁獲量は前年の4割にとどまった。同漁協が手がける産直通販は何とか申込数に対応する商品数は確保できたが、一時は「申し込み受け付けをやめるかを検討した」(大樹漁協の伊藤浩二専務理事)という。
価格も急上昇している。
白糠漁協(白糠町)によると、今年の18日までの浜値(単価)は1キロ当たり平均で税別4332円。15日には1キロ同5990円という高値がついた。昨年の平均も1キロで同2576円と例年に比べ高かったが、今年はさらに上回っている。藤田正明総務部長は「以前ならば1キロ1000円を超すと、高いなという感じだったのに……」と嘆息した。
抱卵したメスが人気で秋から初冬にかけてが旬となるシシャモはお歳暮などギフトの需要もある。藤丸百貨店(帯広市)の鮮魚店「一鱗」の平手伸英店長は「例年は注文した分だけ確保できたが、今は販売を原則中止している」という。
11月上旬にようやく入荷した10箱については、昨年は1箱7000円程度で販売していたのを1箱1万2800円で販売したという。
道によると、道内のシシャモの漁獲量は20年に301トン(速報値)となり、記録が残る1962年以降で最低となった。2019年(515トン)より4割減った。最も漁獲量が多かった1980年には、1万8881トンに上ったが、その後、80年代中盤~2000年代はおおむね1000トン台で推移し、12年以降は1000トンに届いていない。
産地の漁協の声をまとめると、21年は記録的な不漁となる可能性がある。ただ、その原因は分かっていない。シシャモがどう生きて何を食べてという基礎的な研究がこれまでほとんどされてこなかったからだ。
その中で注目されているのが海水温だ。道立総合研究機構栽培水産試験場(室蘭市)によると、胆振中・東部沿岸の海面水温は今年7月の平均で19・9度と1982年以降では最も高く、特に8月6~9日には過去最高の25度台が続いていた。
海水温とシシャモの成長の関係を解明しようと、同試験場は今年から4年計画で、飼育実験に乗り出した。同試験場の安宅淳樹研究職員は「高温に弱いのかどうかもわからない。シシャモが餌とする生き物や、シシャモを捕食する生き物が水温変化の影響で増減していることもありうる」と話す。周辺の海では、サケの漁獲量が減る一方でブリが増え、今年は道東・日高地方で赤潮の影響とみられる漁業被害も発生するなど、環境が大きく変わっているからだ。
資源回復に向けたチャレンジも進む。むかわ町は22年度に、老朽化したシシャモ孵化(ふか)場に代わる新しい施設に新築移転し、孵化能力を増強させる方針だ。鵡川河口近くに新設する孵化場は、孵化数約1億匹と、現在の約3倍になる予定だ。
早ければ同年秋から採卵と孵化を開始、23年春に稚魚を放流する考えという。
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